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第六回 法令指針の注意点

改正公益通報者保護法が2022年6月に施行され、合わせて法令に基づく指針と指針の解説が公表されました。同指針には、内部通報制度の体制整備そして運用する上で、順守しなければならない必要事項が記されています。
そこで最終回の今回は、法令指針の注意点について取り上げます。

改正法により、従業員300名を超える事業者は、内部通報制度の体制整備が義務付けられることになりました。具体的には通報受付窓口を設置し、受付、調査、是正について部署、責任者を明確に定める必要があります。窓口部署だけでなく、調査、是正のための部署が求められていることに注意しましょう。

また、通報対応業務を行い、通報者を知りえる立場にある者を従事者として定める必要があります。この者は厳格な守秘義務を負い、違反した場合は刑事罰が科される場合もあります。
よって、当人が認識していなかった事態を防ぐ意味でも書面など、従事者になる者自身に明らかになる方法で従事者を指定する必要があります。

窓口業務をはじめ、通報対応業務は、組織の長そのほか幹部から独立性が確保される必要があります。社内であれば、監査役や監査部門、外部であれば専門会社や弁護士事務所の活用が考えられます。また親会社等、グループ会社を通じた仕組みもよいかもしれません。

通報があった場合は、原則調査を実施しなければなりません。調査の結果、法令違反など、是正すべき通報事実が確認できた場合は、是正措置およびその後の確認など、必要な措置を取らなければなりません。必要な是正は当然ですが、再発防止を含めたフォローアップ措置まで求められていることに注意しましょう。

通報対応業務における利益相反の排除に関する措置として、通報事案に関係する者が、通報対応業務に関与させない仕組みを作り運用する必要があります。中立性・公正性の観点から当然とも言えますが、例えば、経営陣と関係が深い顧問弁護士の関与は、場合によっては利益相反に該当する場合もあると考えられます。

先のコラムで重要性をお伝えした通り、通報者を保護する体制整備上、不利益な取り扱いを防止するための措置が必要です。通報者が不利益な取り扱いを受けていないか否かの確認、当該行為を把握した場合の救済・回復、当該行為者に対する懲戒措置などが挙げられます。しかし、一度でも「不利益取り扱い」行為が生じてしまうと、制度に対する信頼を損ねますから、啓発など、不利益行為予防に重点を置く措置や取り組みが求められます。

通報者を保護する体制整備上もう1つ重要なこととして、範囲外共有などの防止に関する措置が挙げられます。範囲外共有とは、通報者を特定する情報について必要最小限を超えて共有することを意味し、単に秘密漏えい防止を意味するものではないことに注意が必要です。
つまり、通報者を特定する情報の漏えいをしてはいけないことはもちろんのこと、関係者間であっても必要最小限の範囲で情報を共有しなければならないということです。また、通報者の探索は、調査上やむを得ず必要な場合などを除き原則行ってはいけません。よって、範囲外共有や通報者探索を予防するための措置や生じてしまった場合の救済や懲戒などの措置を取ることが求められます。しかし、不利益取扱い行為同様、これらが一度でも生じてしまうと制度利用者の信頼を著しく損ない制度が利用されなくなる恐れがあることから、予防のための措置に重点を置くべきでしょう。

整備、運用する内部通報体制については、教育および周知をする必要があります。現職の従業員や役員だけでなく、少なくとも退職後1年以内の退職者に対しても必要になります。実効性の高い内部通報制度を整備運用するため教育および周知は極めて重要度の高い事項であることを認識しましょう。
また、該当する事案についての通報受付だけでなく、内部通報制度の仕組みや不利益取扱い事項など、全般的な質問や相談に対応できる体制が求められます。これらに対応することで、制度利用者の信頼を高め、より効果的な制度運用が可能となるでしょう。

通報者に対しては調査結果、是正措置結果など、対応結果について速やかに伝えましょう。
通報したにもかかわらず、事業者からフィードバックが何もないと通報者の不信感が募り、制度の信頼の棄損、外部通報への発展など、マイナスの影響を及ぼしかねません。またフィードバックは適正な業務の遂行、通報関係者の秘密、信用、プライバシーなどの保護に支障がない範囲で行う必要があることに注意します。

内部通報制度をより実効的に運用するため、規程類を整備、記録類の適切な保管も重要です。これらは内部通報制度に限らず事業を運営する上で欠かすことはできません。そして、内部通報体制についての評価・点検や運用実績について適切な開示をし、継続的な改善を図っていくことが求められます。

以上、指針についてのポイントを述べました。消費者庁から公表されている指針の解説には、より詳細な説明が記されています。内部通報制度を運用している、あるいは整備を予定している事業者様は、ぜひとも自組織の制度整備、運用への活用を強くお勧めいたします。

以上を持ちまして、内部通報制度のコラムを一旦終えたいと思います。お読みいただきありがとうございました。

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